「おまえに言ってなかったことがあるな」


エアコンの温度を下げると、汗が滲んだままの顔で藍が言った。


呼吸を整える未来はまだ返事ができない。



「迎えにいくからな」


藍に肩を抱かれたままの未来が顔を上げて藍を見た。


「うん」


そのまま藍が黙ったので未来は藍の頬を小突いた。


「なんだよ」


「もう一回言って。さっきの」


「あ?」


「未来は誰のもの?」


「うるせー」


「早く」


「忘れた」


「早くー」


「だまれ」


未来は大きく息を吸い込んで藍の匂いを感じた。


「藍大好き」


「おう」


時間が止まればいいな。この日何度も何度も感じたことを、眠りにおちる直前まで二人は思っていた。