「お前今日有里華さんと飯は?」


「ママ」


藍の胸に顔を埋めたまま未来がようやく口を開いた。


「結婚するんだって」


「そうか」


「妊娠してるんだって」


「そうか」


「藍」


「…おう」


「どっかいこ」


「どっかってなんだよ」


「ホテル」


「は?」


未来は顔を上げない。


「ママからお小遣いもらった。いい部屋いこ」


「…」


「藍がしたいことなんでもしていいから」


「おい未来」


藍の胸に顔を埋めていた未来の肩が震えだす。


「藍…」


震える声で未来が藍にしがみつく。


人が行き交う駅前のロータリーで、藍は黙って未来の小さな身体を抱きしめた。