息を切らせて駅前に着いた藍は、白パーカーにデニムを合わせたシンプルな出で立ちだった。


駅前のロータリーの時計台の前で、藍は辺りを見回す。


『今から会いたい。駅前の時計台で』


未来からのLINEが来たのは20分ほど前。


『家くれば?』


という藍の返信には、既読が付いたまま返ってこなかった。


10分ほど返信を待ってみたが返事はなく、なにかを感じた藍はスニーカーに足を突っ込んで駅前に走った。


藍がもう一度スマートフォンを見ようとしたとき、視界に花柄のワンピースが目に入った。


「どうした?」


聞く前に、藍の胸の中に未来が飛び込んできた。


「おいやめろよ」


戸惑う藍が周りを見回すと、人通りが多い駅前のロータリーで通りすがる人が藍たちの方を見た。


「離れろよ」


藍の言葉に未来は耳を貸さない。
藍に抱きついたまま未来はなにも言わなかった。


「高校生?」

「見せつけてる感じ?」

「若いっていいね」


周りからはヒソヒソと二人に向けられた声がする。


「おい」


未来は藍から離れない。