田村先輩と未来が並んで歩くと、下校中の生徒がチラチラと二人を見ては何かつぶやいているのがわかる。

「俺ら三年の間でも話題になってるよ」

「はぁ?」

「可愛い一年生が入ってきたって」

田村先輩は普段藍が絶対に言わなそうなセリフをサラサラと口にする。

「大丈夫だった?今日」

「え?」

「彼氏とかいるんじゃないかなって。こんなに可愛いから」

「いません」

未来の一番身近な男性、藍は未来に可愛いなど一度も言ったことがない。未来はなんと返していいか返事に詰まってしまう。

「本当に?俺チャンスある?」

「先輩こそ、彼女いるって…」

「あー、情報早いね。いたけど別れたよ」

田村は眉を八の字に下げて鼻をこすった。

「好きな人とかいるの?」

「いないです」

「まだ一年生だからそういうのに興味ない?」

未来が田村の質問にどう答えていいかわからず困っていると、少し前を歩いていた田村が足を止めた。

つられて未来が足を止めると、田村が未来の方を向く。

「付き合ってみる?俺と」