食事を終えてデニーズを出ると、純はシルバーのワンボックスの助手席を開けて「どうぞ」と少しおどけて未来を促した。


「家まで送るよ」


「歩いて帰れるよ」


未来が首を振ると


「夜中に女の子を一人にできないでしょ」


と、純。


「それに、もう車に乗ってるし」


以前よりも純に心を許している自分に、未来はまだ気がついていない。


「食後のコーヒーだけ付き合って」


純は車を発進させると、コンビニでドリップコーヒーを購入した。


コンビニエンスストアの正面でなくサイドの壁際の駐車場スペースに車を停めると、人気はなく明かりもない。


「俺の一人暮らしの家遊びに来る時、元カノが俺の料理が食いたいって言ったからさ、カルボナーラ作ってやったんだよね。ちなみに俺の初めての料理ね

すげー喜んでくれて、まぁ嬉しいじゃん?
また喜んでもらいたくて俺すげーカルボナーラ研究したのw」


座席のシートに寄りかかり、純はコーヒーカップに口をつけた。


車内にコーヒーの香りが広がる。


「それで、彼女はどうなったの?」


「結局地元で就職して、その短大のサークル仲間と今でも付き合ってるみたいよ」


「ひどい。二股じゃん」


「まあ、俺もあいつの寂しい気持ちとか気づけてなかったからね。俺に原因があると思ってるよ」


「遠距離で寂しいのはお互いだよ。純は悪くない」


純が運転席から首を傾けて未来を見た。


「優しいね。ミクちゃん」