「成宮さん!良かった生きてたんですね」
本当に安心した。
これでダメだったらどうしようかと。倒れてるわけじゃなかったと安心したのもつかの間。
扉の向こう側から出てきた成宮さんに、息をのんだ。
「……うるさいよあんた」
ゆるいダークグレーのスウェットからのぞく鎖骨に無造作な髪、掠れた声のトリプルコンボで色気をカンストしてしまっている。
「わ、たし。お見舞いにと思って」
「お帰りください。じゃ」
「私、部屋となりなので」
「……は?」
何言ってんだこいつ、と言わんばかりの表情。
「ほら、ちゃんと鍵だって持ってますよ」
入居時に渡された鍵を取り出してみせる。こんなすぐバレそうな嘘、つくわけがない。
「…………」
「今一瞬住むとこ変えようかなって思いました?」
信じられない、でも事実なんだろうという苦悩が伝わってくる。
「いいよ、俺のことは。隣の部屋にお帰りください」
「ちょ、ドア閉めないで!」
「は?何で」
何で、って言われましても。抑揚のない声、感情がみえないポーカーフェイス。


