浅く溜息をついて私の手からタオルを抜きとり、濡れた黒髪にそうっとタオルをあてがう。

ち、近い。

「そんなに緊張しなくても。ゆっくり休んでください」

微かに成宮さんの香りが鼻腔を掠めた。

「誰かにこういうことされるの、慣れてなくて」

「確かに、やってもらったとしても子供の頃くらいですよね。本当はドライヤーとかあればいいんだけど、店になくて」

「大丈夫です!むしろなくてありがたいというか……」

「あはは、何それ」

だって成宮さんに髪を拭いてもらえるなんて、一生に一度あるかないかくらいレアだ。