「それじゃあ行きますか」

「はい」

瀬戸さんの様子からして、もう行く場所は決まってるみたいだった。

私から余計なことを言う必要はないかと雑談をしながら半歩後ろを歩いていたけど。

見慣れた景色にあれ?もしかして……と嫌な予感がしてきた。

いやまだそうと決まったわけじゃないし、いやいやどう考えてもこれは。

なんてひとりで押し問答しても仕方がない。

諦めて聞くことにする。

「瀬戸さん?今日飲みにいく場所って」

「和花菜がお気に入りって言ってたバー。俺もあの店に久しぶりに行きたいって思ってたとこだったんだ」

ですよねぇ!!

勘違いじゃなかったけど、できれば勘違いがよかった。

だからといってここまで来て引き返せるわけがない。

それに瀬戸さんはきっと私の好みも考慮してあのお店を選んでくれたわけで。

どうすることもできず、おとなしく瀬戸さんの後ろに続いてバーの中に入った。

「いらっしゃいませ」

完璧な笑顔で出迎えてくれたのは、成宮さんだった。