「私、たまたま亜里沙さんがこの部屋から出てくところ見ちゃって」

「ふらっと来るんだよ」

困ったやつ、口ではそう言ってるけど本気で嫌がってるようには思えない。

「そうなんですね。実は亜里沙さん、今私がいるチームで担当してる案件のクライアントだったんです」

「まじ?すげーな」

面白い縁があるんだなと少し驚いた様子でスープを食べ進める。

「成宮さんと亜里沙さんはどんな関係なんですか?あ、深い意味はなくて。クライアントのことを知っておきたいなって」

何か知っていたら仕事上で役立つかもしれないしと付け加えておく。

「亜里沙とは留学先で知り合ったんだ。亜里沙んとこ商社だろ?その営業してた間、うちの店に来てさ」

商談に海外出張していた亜里沙さんが息抜きにと訪れたバーに、成宮さんはいたらしい。

お互い日本人同士っていうこともあって打ち解けたと。

話ながら懐かしむように柔らかい笑みを浮かべる。

「で、俺が日本に帰国してからも向こうが遊びに来るから、なんだかんだつき合いが続いてるって感じ」