焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新


お隣さんだけど普段は生活リズムが違うせいで全然会えない。

渡せるときまで気長に待つか、連絡するか。

ああでもないこうでもないと迷っていたところで。

ガチャッ。

隣からドアが開いたような音がした。

「もしかして、成宮さん帰ってきた?」

だとしたらこのチャンスを逃す手はない。

はやる気持ちを抑えながら自分の部屋のドアを開け放った。

「成宮さんおかえりなさい!」

「……た、だいま?」

今日は仕事が早く終わる日だったんだろう。この時間に会えるなんて。

「何?わざわざ挨拶しに来たの?」

「あ、そうじゃなくて。これをお渡ししたくて!」

手に持っていたある物を差し出す。

「俺に、くれるってこと?」

「はい!前に江の島行ったとき拾ったシーグラスや貝殻を使ってメモスタンドを作ってみました」

実はあの日、せっかくふたりで拾ったのにそのまま置いておくんじゃもったいないと思って作り始めたのだ。

「今さっき出来て、はやくお渡ししたいなって思ったら。つい」

成宮さんは出来上がったシンプルなメモスタンドをまじまじと見つめる。

色の配置とか結構こだわったんだけど、好みじゃなかったかな?

「やっぱ女子だなー。こういうの作るとか」

「なけなしの女子力を総動員してみました」