これくれらい、弱音の範疇じゃないかもしれないけど。
社内でも社外で会った時でも、常に『頼れる先輩』でいるから。
「規模感が違いますし、新規クライアントとなると信頼関係をゼロから築いていかなきゃいけないですしね」
目線をさげると、首まわりを緩めたワイシャツの隙間から鎖骨がちらついて困る。
「でも、清水がいるから助かってる」
私に寄りかかるような姿勢から、今度は私が瀬戸さんに寄りかかるように抱きしめられた。
「清水が……和花菜がいるから、俺は毎日スムーズに仕事ができる」
子供をあやすように、ぽんぽんと背中を撫でられた。
和花菜、と名前で呼ばれたのも初めてかもしれない。
「だからさ。和花菜が思いつめたような顔してるの、あんまり見たくないんだ」
「……っそれは」
「前に浅野の人生相談室?に相談してたみたいだし」
ああ、あの昼休みの時。
「パーティーでも切羽詰まった様子で帰ろうとしてた。どんなことでもいいからさ、言ってみないか?」
休憩中だからか、声のトーンも表情もどこか違う。
先輩として、っていうより瀬戸さん自身の言葉みたいな。


