気がつくと、駅のホームだった。
もうそんな時期か、と独り言ちるのと、その妙な感覚に慣れるのは一緒だった。


人の声が多い。談笑する声、抑揚のない声、或いは、悲痛な泣き声。
所々に、犬猫の声や、それ以外の動物の声が聞こえる。視界の中で、猫を腕に抱える齢八つ程の少年が見えた。


誰だって、何だって、乗せて行ってくれる。
それがこの電車だった。

ふと、視界の端に赤子を連れた女性が映った。穏やかに眠る赤子を片腕に、ベビーカーを畳む姿に苦難の色が混じる。

「手伝いますよ。」



女性は驚いた顔の後、恥ずかしげに「お願いします。」と囁いた。成る程、赤子をあやすに適した声だと思った。