『拝啓、恋人様。僕を馬鹿だと罵って下さい。パスポートを観光先で落とし、気付いたのはホテルに戻って便座に座ってからです。最高に笑えない。次の記念日まで二週間、死ぬ気で見つけ出してみせます。そう言えば以前君と行った台湾でも同じ事をしましたが、あの国に比べてこの国の人がどれだけ親切かは正直図りかねます。神に祈って下さい。』
「拝啓、貴方へ。手紙書いてる場合か。死ぬ気で探せ。早く会いたいです。」
『拝啓、呆れ顔の君へ。便意もそこそこに観光地へ繰り出し、無事にパスポートは見つかりました。ミケルが周辺の人に事情を説明してくれて助かりました。偶々その近くに住んでいるおばあちゃまが、犬の散歩中に見つけてくれたそうです。こんな朝早くから一人でベンチに座るおばあちゃまが可笑しいと思ったのですが、世界の優しさに感謝する他ありません。
名残惜しいですが、この旅もそろそろ終わりです。』
「拝啓、馬鹿野郎へ。無事見つかって良かった。ミケルさんと旅に出たのも最早神の思し召しのように思います。久し振りに貴方に会いたい。」
