『……誰ぞ来たか……ちこう寄れ…』

「は、はっ!!」

彼は反射的に
武将風な返事をしてしまったが、

その後どう対応していいものか……

シリウスをチラリと
見てみたが、先ほどの
ダメ出しでショボくれていて
まるで助けてくれそうに……ない。

しかたなく、
ソロリソロリと
屏風の表に回ってみると…


『なーんてね♪ いらっしゃーい♪』

その者は、
先ほどは誰かの
真似で言ったようで、

全く軽い調子で、
彼を出迎えたのだった。


白銀の長い髪…
白く、ピンッと立った大きな犬耳(?)…
切れ長のキツネ目…
ふさふさのしっぽ…
そして、
ふさふさのしっぽ…
まだまだ、
ふさふさのしっぽ…
ふさふさのしっぽが…全部で9本…


「きゅ、九尾の………ふさふさぁぁぁあ!!」

予想した人物とは違ったが
彼は、白銀の
九尾の狐(の、しっぽ)に
完全に心を奪われてしまった。

『素敵でしょ?僕の尻尾♪
さわってみるかい?』

九尾の狐は、
妖艶な笑顔で
得意気に尻尾を振ってみせる。

「い、いいんですかぁ?(ハァハァ)」
『いいよ♪』

もはや…猫が猫じゃらしを
追うが如くに…

(触りたい…!!)
(顔をうずめて……モフモフしたぁい…!!!!)

その誘惑と
抑えられぬ衝動に
あらがう術はなかった。

彼が、ゆっくりと手を伸ばす…

と、

突然、
何者かに「ガッ」と
腕をつかまれ、止められた。




「触るでない……
喰われる…ぞ」