千本鳥居の闇をぬけると
そこは、
日本様式のきらびやかな
建物の中であった。

「……城……天守閣…?」

彼は、どこかで見たことが
あるような気がした。

柱などの金具は金細工で
壁には、中国の賢人であろう
人物が描かれている。
床は板張りの漆塗りで、
姿が映るほどツヤツヤであった。

なにより特徴的なのは
その部屋は八角形…

「あ、安土城…?」

彼はごくりと息をのんだ。

部屋の中央に屏風がある。
後ろからでは、よく分からないが
そこに誰か座っている
気配がするのだ。

それは、シリウスから感じられる
周りの空気すら浄化しているかのような
"清らか"な感じとは
まったく違う……

心をざわつかせる
"妖艶"な気配であった。

当然……"あの人物"が
彼の頭を過った。