『むぅ…
…しかた有りませんねぇ…』


あまりにも、
彼が泣き出しそうな目で
ガン見してくるので

シリウスは自分の翼から
1枚…羽を「ぷつり」と抜き取り
彼に手渡した。

だだっ子を黙らせる、苦肉の策である。


『いいですか?
私のこの羽は、
如何なる魔物も逃さぬように
自動的に飛んで行き、
突き刺ささり、
聖なる業火で魔物を滅却します。

…ですので、
けして手を放さず
しっかり持っていて下さいね?』

「わぁあ…♪
"滅却の翼"……かっこいいー…」

シリウスの苦肉の策は、
見事に成れり。

それは、たった1度しか使えない
最終兵器とは気付かずに、

彼は激レアアイテムを手にいれ
(さらに勝手にネーミング)
目をキラキラ輝かせ、
それを大切に両手で受け取った。

………が


次の瞬間、

ピュッ

「…あ…」
『…あ!!』



さっそく指の間をすり抜け


滅却の翼は……

空高く飛んで行ってしまった。