緑の布地に白い水玉。



手のひらサイズのそのリボンの髪飾りは、



昔、君が私の誕生日にくれたもの。



髪飾りを眺めていると思い出すなあ。



よく、小学校の頃二人で遊んでいたことを。



何にも考えていなくて、頭は空っぽで、



お互い色んなことを話していたね。



日常の何でもないこと、下らないこと、



好きなマンガやアニメから、



家族のことまで。



もちろん、君が私をどう見ていたかは分からない。



でも、今思えば、あれが"親友"って



やつだったのかな。



当時は深く考えなかったけど、



今になってようやく分かった気がする。



あれほどお互いの深い部分まで知り合えた



関係って、もうこの先ないかもしれない。



どんなにたくさんの顔見知りの人が、



プライベートで関わる友人が増えたとしてもね。



もう、あれからはずいぶん経って、



私は社会人になった。



君は大学生になったと同級生から聞いた。



そして、恋人がいるってこともね。



幸せそうで良かったっていう気持ちもあったが、



実はちょっぴり、



ジェラシーを抱えている自分もいた。



いけない、こんな気持ちはダメだ!って



思ったけど、



やっぱり、寂しかった。



これが、時の流れってやつなんだって、



初めて思い知らされた時だった。



もう、今は連絡をとることもないし、



お互いを取り囲む環境も違うだろうから、



あの時のように、



うまくいくことはないだろう。



きっとこのまま、少しずつ離れていくだけ。



だから、せめて



ほんの少しだけでいい。



君の心の片隅に、



私を居させて欲しい。



分かっている。



君の隣にいるのは、



君の大切な人。



邪魔しちゃいけないって、



分かってる。



もう、あの時のように



一緒に笑い合うことがこの先ないなら、



せめて、心の片隅に私を居させて欲しいんだ。



ずっと今まで、十分過ぎるくらいに



色んなものをもらってきた。



何度だって思い返すことがある。



君が、私に色んなものをくれたように、



私も、何か少しでもお返しができたかなって。



あの時の私はただ、おどけることぐらいしか



できなかった。



はちゃめちゃなことを言って、



君を笑わせることしかできなかった。



でも、もしそれだけで、



ほんの一瞬でも、



君が元気になれたことがあったなら、



私はそれだけで、とても嬉しい。



もう、それだけで十分。



十分なんだ。



だから、私もそろそろ行かなきゃいけない。



暗闇が段々晴れてきたから。



後ろばかり見ちゃいられないから。



このリボンの髪飾りは、



お守りとしてずっと持っていることにするね。



大事な大事な宝物だから。







今までありがとう。



本当にありがとう。





どんな言葉でも足りないくらい、



感謝の気持ちでいっぱいだよ。





ありがとう。





ありがとう。









それじゃ、
私、もう行くね。







バイバイ。













さようなら。