カバンの中身をばらまいてしまった。


「どんくさいとこは、昔からだな。小物バラケすぎだろ。ポーチとか使えよな、おっさん」

「言い返せない…」


そそくさと、落とした小物たちを拾う。

真山はむくりと起き上がり、スマホに手を伸ばした。


「あとは、定期と~………あった!リップ~」


私がリップクリームを拾い、そう言うと、


──ぼとッ。


真山の手から、スマホが落ちた。


「真山こそ何やってんの」

「いや……」

「どんくさ~」


してやったり顔で、笑いながらそういう私を真山は軽く睨んだ。

ふーんだ、怖くないもんね。


蓋を外し、くるくるとリップを出す。

鼻歌交じりに塗っていると、真山がじっと見てきた。

なんだろう。


「もしかして真山もリップ塗りたいとか?」

「あ?なんでそうなるんだよ!」


ふふん、わかるわかる。

これは私もお気に入りのリップクリームだからね。


「いいっしょ、このリップ。デザインも可愛いし、ここのブランド好きなんだ~。香りも良くてね~見て見て!」

「…はちみつ、レモン……」

「そう!塗る?」


ほれほれと、真山に向かってリップを振る。

色つきだけど、真山、可愛い顔してるし。

きっと似合うと思うんだよね~~。


「ねえ、塗っていい?」


俯きながら震える真山。


「あ、あれ………もしかして怒った?」

「………………」

「ま、まーやまぁ…………?」




「…………あー!もう!!」