警察の後、俺は会社に入るなり、一番に社長室に向かった。


ことの全てを報告するために。


父さんは、石川の代わりに俺にディレクターを任せると言った。


もちろん、言われなくても、俺が志願したが。


父さんには、俺の思いが通じるんだな。


母がいない分、確かに寂しい時もあったが、それでも、小さな頃から、家にはお手伝いさんやいろいろな人間が出入りしてて…


俺は、みんなに守ってもらってた。


ただ、身内としては…ずっと父さんと2人で支え合って生きて来た。


だから、お互い、信頼が厚い。


『父さん、すみません…いろいろ心配かけて。その分、彼女と一緒に成長します。会社に相応しい人間になれるよう』


『楽しみだな。まあ、待ってるよ』


俺は頭を下げ、部屋を出て、ミーティングルームに向かった。


もう、みんな集まっていた。


絶対にこの仕事、成功させる。


恭香のために、父さんのために、チームのために…そして、自分自身のためにも。


そこには、恭香の笑顔があった。


それだけで…俺は…嬉しかった。