自分の中の醜くて黒い感情がドバッと出てくる。
その中でいちばん強いものは嫉妬の感情。
彼女なら堂々と、依生くんはわたしのだって言えるのに……。
幼なじみって立場だと言えないなんて……。
こういう時、幼なじみは不利に働く……。
何も言わず、涙を見られたくなくて隠すようにその場を去ろうとすれば……。
「……逃げないでよ帆乃」
さっきまでとは打って変わって、声のトーンがどこか優しくて、動きを止めてしまう。
そして、あっという間に依生くんの大きな身体に後ろから包み込まれた。
「やだ……っ、離してよ……」
精いっぱい抵抗して逃げ出したいのに、それとは裏腹に依生くんの体温を感じてドキドキしてしまう矛盾。
「……抵抗なんてしても無駄なのに?」
甘い声が耳元で聞こえてピクッと身体が跳ねる。

