可愛がりたい、溺愛したい。




中に入ってくると、わたしのほうは見ずにキッチンのほうへ行き冷蔵庫からペットボトルのお茶を手にとって飲んでいた。


その姿を遠くからジッと見ていると。



「……なに?」


依生くんがこちらを見た。


ほら、やっぱり花野井くんが言っていたとおり機嫌が悪い。


無言でそばに近づいた。


そして、控えめに依生くんの制服の裾をキュッと握った。



「……なに、この手」


「怒ってる……の?」


「……そんなこと聞いてどーするの?」


「っ、」


なにもそんな急に冷たくしなくてもいいじゃん…って思うけど、それは口にしない。


「逆に聞くけど、なんで僕の機嫌が悪いか帆乃はわかんないの?」


「……葉月くん…のこと……?」



依生くんの顔をしっかり見ると、葉月くんの名前を出したらあからさまに嫌そうな顔をした。