とりあえず髪を結い直さないと。
持ってきたカバンの中からブラシを出して髪をといていると。
「ねー、帆乃先輩」
急に後ろから桜庭くんに名前を呼ばれて、振り返ろうとしたら。
「……ひえっ!?ちょっ、なに!?」
いきなりガバッと抱きつかれて、びっくりする。
それと同時に、桜庭くんの甘いお菓子みたいな匂いが鼻をかすめる。
「さっき先輩にボールぶつけた倉橋がさー、先輩のことめっちゃ可愛いって褒めてた」
「そ、そんなことないよ。
わたし地味だし…。桜庭くんだってさっき地味って……」
「その地味な姿が仮だとしたら?」
「え?」
「本当は可愛いのに、それを隠してるとか」
「っ、それは違う、から」
「じゃあたしかめさせてよ。
帆乃先輩がホントに地味な子なのか」
身体をくるりと回されて、桜庭くんと向き合う形になる。
顔を見られたくないので、下を向いたけど。

