可愛がりたい、溺愛したい。




救急箱をバタンッと閉じて、棚にしまっていると。


「ねー、先輩」


急に背後に立たれて、びっくりする。


「な、なに?」


「……名前教えてよ」


「え、名前?えっと、芦名帆乃ですけど」


知ってどうするんだろうって思いながら答えると。



「ふーん、聞いたことないなあ。
帆乃先輩ね、覚えとく」


「う、うん」


すると、背後の気配がなくなったので、そのまま振り返ると。



「あー!!やべー!!!そこの人避けて!!」



窓の外から急にそんな声が聞こえてきて。

まさか、"そこの人"が自分だとは思わなくて。


頭にドンっと丸いものが思いっきり当たった。


「い、いたぁ……っ!!」



どうやらグラウンドからサッカーボールが飛んできたみたいで、それが運悪く窓から入ってきてわたしの頭に直撃した。