「忘れ物して戻ったら、帆乃先輩と三崎先輩がいたから」
「っ……」
「声かけようと思ったけど。
帆乃先輩が三崎先輩に見せる顔が、俺には見せてくれたことがないくらい……魅力的で声かけられなかった。……いたいほど三崎先輩のことが好きだって伝わるくらいだから」
わたしはそんなわかりやすい顔をして、依生くんを見ているんだ…。
「あんな顔できるんだね……。
欲しくて、手に入れたくてたまらないって顔してた。
俺にはそんな顔見せてくれたことないのに」
表情に出てしまうくらい、わたしはどこまでも貪欲になったんだ。
依生くんのことになると、自分が知りたくない黒くて醜い感情が出てきてしまうから。
「……俺は三崎先輩より帆乃先輩を好きだって言える自信あったよ。
けど、俺の一方的な想いだけじゃ成り立たないんだって思い知らされたみたいだったから。そんな当たり前なことすらわかんない俺ってやっぱガキなんだよね」

