可愛がりたい、溺愛したい。




***


「へー、結構高くまで上がるんだね」


「…………」


「帆乃先輩?」


「あっ、そ、そうみたいだね」


結局拒否することができずに、観覧車に乗ってしまった。


ふつうは観覧車に乗ったら正面同士で座るかと思っていたのに、いま隣同士で座っている。


肩が触れるか、触れないかくらいの微妙な距離。



「……いま、2人っきりだね」


さっきまで外の景色を見ていた横顔が、急にこちらを向いて、しっかり目が合った。


いつになく真剣な顔をしているから、思わずそらしたくなってしまう。


だけど、そらす前に……



「……先輩が俺のこと好きだって言ってくれたらいいのに」



小さくて弱い声なのに、なんて言ったか、はっきり聞こえてきて。


……甘い香りに包み込まれた。