指差した先に見えるのは大きな観覧車。
「ベタだけど、好きな人と乗るって憧れない?」
さらっと"好きな人"と口にされて、ドキッとした。
ここで過剰に反応したくなかったので
「葉月くんなら……わたしじゃなくても他にもっと見合った子がいると思う…よ」
かわいくないことを言ってしまった。
この態度に呆れてくれればいいのに。
「先輩ひどいなあ。
誰でもいいってわけじゃないのに」
わざと軽く笑って見せているけど、これは作りものの笑顔。
「……帆乃先輩じゃなきゃダメなのに」
握ったままの手をそのまま引かれて、こちらを向かず前を見ながら歩き出して
ボソッと……
「これでさいごにするから」
届くことのない声が、微かに空気を揺らした。

