「わ、わたしがそばにいても何もしてあげられないから……。先生呼んで早く処置してもらったほうが…」
「……そんなのいらない。
帆乃さえいてくれたらそれでいい……」
つかんでくる手の力はあまりに弱くて、振りほどこうと思えば簡単にできてしまう。
だけど……こんな弱った姿で言われたらできるわけもない。
ここ最近会話すら交わしていなくて、ギクシャクしていて。
もう二度とこんなふうに2人で話すことや、触れることなんてないと思っていたのに。
今こうして一緒の空間にいて、依生くんがわたしを求めているなんて……。
複雑な気持ちのまま、ベッドのそばに置いてあるイスに腰を下ろした。
手はまだつかまれたまま。
「……さっき」
「え?」
「ケガ……したみたいだけど大丈夫だった?」
「あ……」
きっと見られていたに違いない。
さっきの光景を。

