可愛がりたい、溺愛したい。




「俺のこと……ちょっとは意識してくれる?」


甘えるような声に揺さぶられて、反応に困っていると。



『1年3組、桜庭葉月くん。
出場する種目の集合時間が過ぎています。
至急グラウンドまで来てください』


突然聞こえてきたアナウンスにびっくりした。



「あーあ、いいところで邪魔入ったなあ」


チェッと不満そうな顔をして立ち上がり。



「いま言ったことぜんぶ本当だから。
ちょっとは俺のことも考えてね」


いつもの調子にころっと戻り、驚いて固まるわたしの頬に軽くキスをしてきた。



「っ!?ちょっ…!」


「彼氏になったら口にさせてね」


いたずらな笑みを浮かべて、うまいこと逃げるように保健室から去って行ってしまった。



「も、もう……」


変なの…。
葉月くんのことなんてただの後輩でしか見ていなくて。

恋愛対象なんて依生くんしかありえないはずなのに。