可愛がりたい、溺愛したい。




グラウンドからここに来るまでずっと葉月くんの胸に顔を埋めていた。


「それを言うなら先輩のこと抱っこしてる俺のほうが目立って恥ずかしいのに?」


「そ、それはそうだけど…!
というか1人で歩けるもん…!」


ひねったわけでもなく、ただのかすり傷だし。

さっきから下ろしてとお願いしてるのに


「ケガ人なんだから黙って運ばれてればいーの」


なかなか折れてくれず、結局保健室まで運んでもらった。


保健室に着くと、いつもいるはずの古川先生はいなかった。


たぶん外の救護テントにいるのかな。



「先生いないみたいだから俺が手当てしてあげる」


「えっ、いいよいいよ。
自分でできるし」


ぜったいわたしのほうが手際いいだろうし。



「はいはい、ケガ人はおとなしくイスに座っててね」


結局何もやらせてもらえず、近くにあった長イスに腰掛けた。


数分して葉月くんが救急箱を持ってやってきた。