「じゃあいこーか」


「う、うん」



依生くんの声にハッとして、自分の世界から戻ってくる。



家をいつもの時間に出て、学校には電車で向かう。


家を出てから徒歩10分ほどで最寄りの駅まで着く。

タイミングよく電車が来たので乗り込む。




「……うっ、く、苦しい……」



毎朝毎朝、この時間帯の電車はおしくらまんじゅう状態。


「帆乃、大丈夫?」



背の高い依生くんは人に埋もれることはないけれど、
わたしは周りよりは小さめだから電車やバスに乗るといつも人に埋もれて挟まれてしまう。




すると、依生くんが入り口の扉にトンッと手をついて、わたしが苦しくならないように隙間を作ってくれる。


すごく距離が近くて、電車が揺れるたびに依生くんの身体と密着して、バカみたいに心臓がドクドク暴れる。



それを知られないように隠すのに必死になるのは、いつものこと。



こうしてわたしと依生くんの1日は始まる。