(まさか私が〝LUXA〟のチームに行くとはねぇ)

 信じられなくて未だにまだちょっと他人事だ。自分のデスクの荷物を段ボールに詰め、台車に載せて商品企画部まで運ぶ中、私は緊張と期待でソワソワしていた。

 社内一の注力製品〝LUXA〟のプロジェクト。所属しているメンバーは私でも知っているような社内のスターばかり。技術開発部において異例のスピードで出世を遂げたエンジニアに、〝社内のおじさまで転がせない相手はいない〟と言われている広報部の魔女。最近のうちの会社の売り上げを右肩上がりに牽引しているという第一営業部の主任。そして――何より、このプロジェクトには〝彼〟もいる。

「えっ、あれって森場の発案だったの!?」

 頭に思い浮かべていたその時、ちょうど彼の名前が聞こえてきた。ビクッと驚いてしまった私は少しつんのめって、台車に載せた細かなものが倒れて落ちそうになるのを慌てて手で支えた。その間も、通りすがりの社員の会話は続く。

「〝LUXA〟だろ? 確か森場だったと思うけど。どういうルートを踏んだか知らないけど社長プレゼンまで持ち込んで、『〝良質な睡眠〟に通じるものは食も環境も運動も全部ウチの会社でカバーするべき領域です!〟って熱弁振るったって」

「うわぁ……それで説得したんだ」

「社長、感動してボロ泣きだったって噂。〝こんなに真剣に会社のことを考えてくれる若手がいるのか……〟ってさ」

「すげぇな。確かにあいつ、めちゃくちゃ働いてるもんな……」

 彼らが立ち去っていく中、私は立ち上がりながらこっそり笑う。彼が褒められているとなんだか私まで嬉しかった。