言いながら、自分がすっぴんだということを思い出して手で顔を隠す。不自然な動き。俯きながら部屋の隅に置いていたボストンバッグの元まで歩いていき、脱衣所に持っていき忘れたスキンケア用品を取り出すつもりだった。――しかしその途中で、私は森場くんに捕まった。
「待てって。体調悪いとかじゃなくて?」
「うわぁっ! じゃなくて!」
両腕を掴まれると同時に素顔を暴かれ、情けない声が出てしまった。とっさに〝体調は悪くない〟と否定したものの――すっぴんで対面した森場くんが、やっぱり直視しちゃいけないくらい色っぽくて。
お湯で温まり血色のよくなった頬も。襟首から見えているしっかりとした鎖骨も。Tシャツの半袖からしなやかに伸びる逞しい二の腕も。
全部私の知らない森場くんだから、直視できない。
「……ほんとに大丈夫なのか?」
「うん……ほんとに。ちょっと湯あたりしただけだから」
自分を心配してくれる顔から精一杯目をそらす。森場くんはまだ私を気遣いつつ、「そっか」と納得した返事をした。
「じゃあちゃんと水分取って……とりあえず今日は早めに寝ようか。明日も仕事あるし」
「そうだねっ……」
答えながら声が裏返りそうになった。……ついにか!
ついに寝室に行くんだ。森場くんはあのプロトタイプベッドを自分の部屋に入れてもらったと言っていた。そのベッドで私たちは一緒に眠るのだと。
これからの展開を意識して、私の顔は更にのぼせあがってしまった。


