【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-

 ……今更何を言い出すんだろう? 彼が仕事に本気だということは、もう充分にわかっているつもりだけど。私は頷いて答える。

「うん、わかってるよ。だから今から私たちは、一緒に森場くんの家に帰るんだよね」

「そうだよ」

「私は二週間、森場くんの奥さん役をするんでしょう?」

「……うん」

「最初は正直〝どういうこと!?〟と思ったけど、引き受けたからにはちゃんとやります」

「…………そっか、ありがとう。……やっぱなっちゃんは真面目だなぁ」

「普通だと思う」

 それにどちらかというと、あなたのことになると不真面目だと思う。



 繋いだ手は、再び彼の部屋の玄関に辿りつくまでそのままだった。閑静な住宅街の中にそびえるタワーマンション。その二十三階に、彼が一人で暮らしているという部屋がある。

 さっきは荷物を玄関に置いただけですぐ出てきてしまった。でも玄関の時点で既にもう広かった。私の住んでるマンションの二倍はありそうな玄関。靴は森場くん一人分だけ。

「どうぞ、あがって」

「お邪魔します」

 新築の部屋特有の真新しい香りを嗅ぎながら、彼に案内されて廊下を進む。突き当りのドアを開けた先がリビングで、その空間は〝やはり〟と言うべきか――。

(……広すぎる……!)

 イメージしていたよりも一回りも二回りも広かった。家具が少ないせいもあるんだろうか。目についたのは壁に埋め込まれた大型の液晶テレビ。そこに合わせて配置されたローテーブル。革製のソファ。少し離れたところにぽつんと食事用のダイニングテーブルがあり、あとは壁際に本棚が置かれている。