「ご馳走になってすみません……ありがとうございました」
「いいよ。っていうか、なっちゃん。マジで真面目だよね……」
別に特別真面目なほうではないと思うけどなぁ。
店の外に出ると、行きしなにも感じた夏の夜の匂いがした。七月の終わり。湿度を多分に含んだ生温かな風が頬を撫でていくと、なんとなくソワソワと気持ちが浮足立つ。
同時に〝ひと夏のアバンチュール〟という言葉が脳裏に浮かぶ。
(……いやいや)
邪まな考えが消えない自分がほんとに嫌。森場くんの前では、やっぱり私は〝真面目〟なんかじゃない。
人の往来からはずれた閑静な住宅街。電車の走る音が遠くに聞こえる。都会でも味わえるひっそりとした夜。私より少し前を歩いていた森場くんはおもむろにこちらを振り返り、ズボンのポケットに入れていた手の片方をこちらに差し出してきた。
「……ん?」
この手はなに?
森場くんの美しい顔が、街灯に照らされて際立っている。彼の表情は少し照れているように見えた。そんなはずはないのに。
「……夫婦設定の手始めとして、手を繋いでみたいなと思うんだけど」
「あ……」
「嫌じゃなければ」
……そっか。こういうところからコツコツ、リアルな夫婦の気持ちをつくっていくんだ。〝徹底してるなぁ〟なんて感心する一方、体中に緊張が走る。いつもより手汗がヤバい気がしてきて、後ろにササッと手を隠してスカートで手のひらを拭う。
「いいよ。っていうか、なっちゃん。マジで真面目だよね……」
別に特別真面目なほうではないと思うけどなぁ。
店の外に出ると、行きしなにも感じた夏の夜の匂いがした。七月の終わり。湿度を多分に含んだ生温かな風が頬を撫でていくと、なんとなくソワソワと気持ちが浮足立つ。
同時に〝ひと夏のアバンチュール〟という言葉が脳裏に浮かぶ。
(……いやいや)
邪まな考えが消えない自分がほんとに嫌。森場くんの前では、やっぱり私は〝真面目〟なんかじゃない。
人の往来からはずれた閑静な住宅街。電車の走る音が遠くに聞こえる。都会でも味わえるひっそりとした夜。私より少し前を歩いていた森場くんはおもむろにこちらを振り返り、ズボンのポケットに入れていた手の片方をこちらに差し出してきた。
「……ん?」
この手はなに?
森場くんの美しい顔が、街灯に照らされて際立っている。彼の表情は少し照れているように見えた。そんなはずはないのに。
「……夫婦設定の手始めとして、手を繋いでみたいなと思うんだけど」
「あ……」
「嫌じゃなければ」
……そっか。こういうところからコツコツ、リアルな夫婦の気持ちをつくっていくんだ。〝徹底してるなぁ〟なんて感心する一方、体中に緊張が走る。いつもより手汗がヤバい気がしてきて、後ろにササッと手を隠してスカートで手のひらを拭う。


