【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-

 逆に相手が森場くんでなければ、いくら仕事のためとはいえ私も首を縦に振ったかどうか。男性社員の家に単身で泊まりに行くのは、普通に考えると怖い。何が起こるかわからないから。

 森場くんが相手ならなぜいいかというと……別に相手が森場くんだったところで、男性である以上条件は変わらないはずなんだよね。〝彼が私なんかに変な気を起こすか?〟という疑問は前提としてあるけど、万に一つも間違いが起こらないとも限らない。

 それでも断りきれなかったのは、彼が仕事にかける情熱が本物だと知っているから。……あと、一ミリだけ、〝森場くんの近くにいたい〟という気持ちがあるから。

「〝昔なじみだからこんな無理を頼めた〟ってのもあるんだけど……」

 私とは対照的に、邪まな気持ちなど一切持っていないらしい森場くんは申し訳なさそうに。

「仕事だからって、こんなこと頼んでごめん。なっちゃんが嫌がるようなことは絶対にしないから、嫌なことは遠慮なく言って」

「……うん。わかった」



 お腹を満たした私たちはお店を出た。お会計の段になり、ナチュラルに彼が全額支払おうとするので。

「えっ、いい! 半分私出しますから!」

「いいっていいって。経費だし!」

「なおさらダメ。払います」

「だぁっ、嘘だよ。俺の自腹です! 出させて!」

 そんなやり取りの末、結局私が奢ってもらう形になり、私たちは森場くん宅への帰路についた。