【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-

「不特定多数にモテたところでさ……誰でもいいわけじゃないし。〝とりあえず付き合ってみる〟とか無理なんだ、俺。そういう始まりで付き合う子のことを大事にできる自信がない」

「仕事が第一優先だから?」

「うん……」

 森場くんらしいな。そう思って小さく頷いた。

「なっちゃんは? 社会人になってから付き合った人とか、気になる人いないの」

「……んー」

 この流れで森場くんをチラッと見て、〝あなたですよ〟とアピールできる根性は……ないか。ないわ。うん、ないない。慣れないことはやめとこう。

 早々に諦めて私は、嘘をつく。

「――いないかな。付き合った人も、気になる人も、今は特に」

「……ふーん」

 一瞬、居心地の悪い沈黙が流れた。探るような目を向けられている気がしてサッと視線をテーブルの上に落としていると、追加の質問が飛んでくる。

「じゃあ、誰かから言い寄られたことは?」

「え? いや、ないけど」

「一回も?」

「一回も」

 言われて一瞬だけ我が身を振り返ってみたけど、ないものはない。仕事関係でたまに絡まれることはあっても〝言い寄られた〟みたいな経験はないと思う。

 私の答えを聞くなり森場くんは天井を仰ぎ、両手で顔を覆って頼りない声で呻いた。

「そうくるかー……」