「吉澤さんはセーフなんだ?」
「幼馴染のよしみで、ギリセーフということで」
ほんとは幼馴染だろうとアウトだと思うけど、セクハラか否かは当人が不快に感じるかどうかによるので。それで言うとあれはセクハラには当たらないんだろう。――私が彼に好意を持っているから。
そんなこと言えやしないけれど。
「幼馴染のよしみかぁ」
森場くんは私の言葉をリピートしたかと思うと、何を思ったのか〝ずいっ〟とテーブルに身を乗り出して顔を近付けてきた。びっくりした私は座ったまま硬直する。
仄かにお酒の交じった吐息を肌で感じる。
「真面目にさ。俺も〝なっちゃん〟って呼んでいい?」
「えっ、ああ……うん」
私は一瞬きょとんとしてしまって、驚いたままよく考えもせず頷いてしまった。
森場くんは「やった」と無邪気に笑い、機嫌よく話しかけてくる。
「じゃあ――なっちゃんはさ、ロクハラ寝具に入社するまではどうやって――」
(これは確かに……変な感じ)
絶対に忘れていると思っていたから、まさか今の森場くんから〝なっちゃん〟って呼ばれるなんて思いもしなかった。急に芽生えてしまったこのドキドキはどうすればいいんだろう。
それから私たちは美味しい居酒屋メニューに舌鼓を打ちながら、十五年近くの空白を埋めるためにたくさん話をした。引っ越しで疎遠になってからのこと。中高生時代はどんな子どもだったか。大学時代はどんな風に過ごしたか。ロクハラ寝具に就職を決めたのはどうしてか。
「幼馴染のよしみで、ギリセーフということで」
ほんとは幼馴染だろうとアウトだと思うけど、セクハラか否かは当人が不快に感じるかどうかによるので。それで言うとあれはセクハラには当たらないんだろう。――私が彼に好意を持っているから。
そんなこと言えやしないけれど。
「幼馴染のよしみかぁ」
森場くんは私の言葉をリピートしたかと思うと、何を思ったのか〝ずいっ〟とテーブルに身を乗り出して顔を近付けてきた。びっくりした私は座ったまま硬直する。
仄かにお酒の交じった吐息を肌で感じる。
「真面目にさ。俺も〝なっちゃん〟って呼んでいい?」
「えっ、ああ……うん」
私は一瞬きょとんとしてしまって、驚いたままよく考えもせず頷いてしまった。
森場くんは「やった」と無邪気に笑い、機嫌よく話しかけてくる。
「じゃあ――なっちゃんはさ、ロクハラ寝具に入社するまではどうやって――」
(これは確かに……変な感じ)
絶対に忘れていると思っていたから、まさか今の森場くんから〝なっちゃん〟って呼ばれるなんて思いもしなかった。急に芽生えてしまったこのドキドキはどうすればいいんだろう。
それから私たちは美味しい居酒屋メニューに舌鼓を打ちながら、十五年近くの空白を埋めるためにたくさん話をした。引っ越しで疎遠になってからのこと。中高生時代はどんな子どもだったか。大学時代はどんな風に過ごしたか。ロクハラ寝具に就職を決めたのはどうしてか。


