【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-

「……森場くん」

「……なに」

「それくらいで会社休んじゃダメだと思う」

「真面目か!」

〝いや正論だけど!〟と嘆く彼は、会社での爽やかでスマートな森場くんと少しイメージが違う。ちょっとヘタレで、可愛い。なんだかもっと見つめていたくなるような、そんな魅力を備えていた。

 私は思わず笑ってしまって、そんな私を見て彼はジト目になる。

「なぜ笑う……」

「や……ふ、ふふっ……んーと……なんか、嬉しいなぁって」

 うん。〝嬉しい〟に尽きる。胸の内側から広がるこそばゆくてぽかぽかした気持ちは、〝嬉しい〟で全部説明がつく。

 すると目の前の森場くんもつられたように笑った。

「俺のほうこそ。あんな昔のこともう忘れられてると思ってたから、すげぇ嬉しい」

(あ)

 くしゃっと笑った森場くんの口に、普通にしている時には見えない八重歯が見えた。

 懐かしい。そういえば子どもの頃もこんな笑い方をしていた。八重歯がチャームポイントだった。嬉しい発見を心のシャッターに収め、頭に浮かんだ〝涼真くん〟という昔の呼び方をぐっと飲み込む。

 代わりに質問を投げかけた。

「……じゃあ。技術開発室では、どうして切り出してみようって思ったの?」

「んー……」

 思案する森場くん。仕事の打ち合わせの時と同じように斜め上を見て、顎に手を当てて考える。

「そうだなぁ、なんだろ。……シチュエーション?」

「シチュエーション?」

「昔みたいに二人でベッドで寝転がってたら、言わずにいられなかったというか……」

「……アレ、私以外にしたらセクハラだから気をつけてね」