【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-

「忘れるわけないだろ」

 オレンジ色の淡い照明の中、森場くんはウィスキーの水割りを飲みながら管を巻く。

 私は彼の正面に座り、少し酔っているレアな森場くんのことを見つめていた。砕けた言葉と雰囲気がくすぐったい。

「憶えてると思わなかったんだもん……」

「もちろん憶えてるよ。眠いとすぐグズってた〝なっちゃん〟」

「……その呼び方はやめて」

「なんで? 湯川さんもそう呼んでるのに」

 それとこれとは全然意味が違う。湯川さんは親しみを込めて初対面からあだ名をつけてくれた。そのあだ名がたまたま被っただけで、森場くんから同じように呼ばれると、急速に幼かった自分に引き戻される気がして困る。

 サーモンのカルパッチョや月見つくね、チーズとほうれん草のチヂミやあさりのスープパスタなどが所狭しと並ぶテーブルを間に挟み、私の正面で森場くんが機嫌よく笑っている。

「やーでもさ、あらためて確認すると変な感じ。ぶっちゃけちょっと照れ臭い」

「私だって……」

「いつから俺のこと気付いてた?」

「え……それは、最初からだよ。森場くんが入社してきたときに名前で」

「マジかー……俺もだ。入社してすぐ社内で見かけた時に〝似てるなぁ〟と思って、すぐイントラで確認したんだ。そしたら同姓同名だったから〝間違いない〟って」

「うそ」

「嘘ついてどうする」