【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-

「何か苦手なものってあったっけ?」

「私? 私は……特にない、ですけど」

「うそ。あれは? 椎茸。キノコ類全般嫌いじゃなかった?」

「大人になったら味覚も変わるでしょ。今はもう平気です」

「偉っ!」

 ――彼は気付いているんだろうか?

〝何か苦手なものってあったっけ?〟なんて憶えてない素振りで確認しておきながら、私がキノコを苦手だったことをきっちり憶えててくれた。私としては、〝そんなことまで憶えてるの!?〟という驚きと嬉しさで、また性懲りもなく舞い上がってしまう。

(……熱いなぁ)

 森場くんに気付かれないように、彼とは反対側の手で顔をパタパタと扇いだ。




 ただの同僚同士らしい何気ない会話をしながら車を走らせること二十分。森場くんが住んでいるタワーマンションに着いた。同じ会社に同じ年数勤めているはずなのに、この格差は一体……。

(ヒットを飛ばしてる商品企画部のエースとなると、特別手当とかも大きいのかな……)

 そんなことを思いながら、彼に一緒に運んでもらった私の荷物を玄関に置き、ご飯を食べにすぐに外に出ることになった。

 お酒も飲むだろうということで、車を置いてお店までは徒歩で行く。森場くんが連れてきてくれたのは創作居酒屋だった。掘り炬燵になっているテーブルは完全個室で、会社の人と顔を合わせることもない。

 そこで私たちは早々にアルコールを入れ、核心である子どもの頃の記憶に触れ始めた。