【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-

 何度冷静に考えてみても同じ感想しか出てこない。言われるがままに森場くんの部屋に移る準備をしてしまっているけど、やっぱりこれってなかなかなコトですよね? 同僚の男の人の家に泊まるとか! しかも一泊だけとかそういう話じゃなくて、彼の妻役として二週間も滞在するなんて。

〝こんなことある?〟と友達や親に話して意見を仰ぎたいところだけど、話したところで混乱させてしまうだけなのは目に見えているのでやめておく。

 そうこうしているうちに、同じく定時で会社を出ていた森場くんが車で家まで迎えに来てくれた。

「時間足りた?」

 自分から〝七時半〟と決め打ちで指定してきたくせに、森場くんはしれっと尋ねてくる。エンジンを掛けながら、私がシートベルトを締めるのを待っていた。

「なんとか間に合ったから、今ここにいるって感じです」

「やっぱ短かったか? ごめん」

 森場くんは子どものように無邪気にニヤッと笑い、ゆっくりと車を発進させる。丸みを帯びた独特の車体 はメタリックブルー。レザーシートの色はベージュ。〝森場くんの好みなんだろうな〟と思うと、車に詳しくない私でも見ていて楽しい。

 森場くんは会社にいた時と同じ格好をしていて、上はVネックのTシャツにサマーカーディガン、下はチノパンだった。営業職ではないから普段からラフなファッションでいるのに、社外で会うとなぜだか新鮮に見えてしまってドギマギする。これから彼の部屋に行って、もっとディープな部分を知ることになるんだと思うと、余計に。