興覚めというか、呆れたというか、とにかく白けた感じで森場くんが私の体を解放し、距離を取った。こうなったら甘い空気はおしまい。もう一度魔法にかかるのは難しい。
 森場くんもこの朝は諦めたのか、ベッドから上体を起こして髪をガサガサと掻いた。

「途中までいい感じだったのに、今度は何がツボったわけ?」

「ええと……〝もう会社行きたくない〟って言われたのに対して〝ダメ人間かよ〟って思っちゃって」

「きっつ!」

「それからその後の〝このまま離したくないよ〟が演技クサすぎて……」

「ダメ出しまで……」

 がっくりと肩を落とす森場くん。私も彼と同じようにベッドの上で起き上がり、眠っている間にはずれてしまったパジャマの一番上のボタンを留めなおしながら、彼に抗議した。

「っていうか、寝る前は森場くんもちゃんとパジャマ着てたじゃない。なんで裸……?」

「裸じゃない、下は穿いてる。今日ちょっと暑いから夜中に目が醒めて、寝苦しいから上だけ脱いだんだよ……」

 言いながら森場くんは掛布団をちらっと捲って見せた。確かにズボンは穿いている。それから彼は天井に向かって〝うーん〟と伸びをした。

(……うわぁ!)

 上半身のすべてが明るみに出て、不意打ちを食らった私はギョッとする。朝日が射し込む部屋でキラキラ光る森場くんの裸体(※上半身のみ)。しなやかで綺麗で、私は〝見ちゃいけない〟と思ったのにしっかり見てしまった。スウェットのズボンの穿き口になだらかに伸びる腹筋に、脚の付け根あたりにある窪んだ腹筋がヤバい。