【社内公認】疑似夫婦-私たち(今のところはまだ)やましくありません!-

「ありがとうございます!」

「純粋な最初の寝心地を教えてくれ。……あ」

 ちょうどその時、斧田さんの首に提げられている社用携帯が彼を呼び出した。私たちが「気にせず出てください」と促すと、〝失礼〟と手で合図して斧田さんは電話に出た。

 斧田さんがこちらに背を向けて部屋の隅で通話を始めるなか、森場くんは今にもベッドにダイブしそうだったところをグッと我慢して、ちらりとこっちを見た。

「吉澤さん。入ってみてください」

「え?」

 森場くんが先に入ったほうがいいのでは……?

 そう言い返そうとしたものの、彼がそう言うからには何か意図があるのかもしれない。〝女性の第一印象が聞きたい〟とか。

 それならここは譲らず、彼に言われた通り私が先に試したほうがいいのかも。

「わかりました。それじゃあお先に……」

 頷いて了承し、私はパンプスを脱いだ。スカートが捲れ上がらないように気をつけながらベッドの中に入る。

(わ……)

 マットレスに背中を預けた瞬間、包み込まれるように体が沈み込んだ。家にある〝Jシリーズ〟のベッドもたいがい沈むけれど、このベッドは浮遊感が違う。

「どうですか?」

「す……すごい!」

「何がどうすごい?」

「体がっ……え、なんだろう、これ……背中から蕩けていくみたいな……」

「その表現いいですね!」

 森場くんはしゃがんだままベッドに頬杖を突き、満足げな顔で私を見下ろしてくる。