乙原さんとの打ち合わせから数日が経ったある日。〝ついに新製品ベッドのプロトタイプが完成した〟と一報が入った。
「早速試してもらおうと思ったんだけど……森場と吉澤さん以外は外出中か」
〝LUXA〟チームで実質のモノ造りを担う技術開発部の斧田(おのだ)さんは、大柄で強面。一見すると近づきがたいオーラを放っているが、今は肩を落とし、目に見えてシュンとしていた。やっとのこと完成したプロトタイプをいち早くみんなに見てほしくて息巻いて来たのに、二人しかいなくて肩透かしを食らったようだ。
「はいはいはいはいはいはい! 行きます、斧田さん! 今すぐ見たいです!!」
「私もっ……!」
森場くんを真似て高く挙手する。百八十センチを超す巨体の斧田さんに二人して詰め寄ると、斧田さんはちょっと嬉しかったのか勿体ぶり始めた。
「ほんとか? そんなに見たいか?」
「見たいです!」
「どうしても? 今すぐ?」
「一秒も待てません! 喉から手が出るほど見たい!!」
「よーしじゃあ付いてこい!」
喜色満面の笑みを浮かべる斧田さんが可愛い。意気揚々とプロトタイプのある部屋へ案内してくれる斧田さんの後ろに付いて歩きながら、私と森場くんは顔を見合わせて笑った。


