乙原さんの反応はどうだろうか。上り調子のプランナーさんというと企画にダメ出しされることもあまりないイメージがあるけど、気を悪くしていないだろうか……。

 私の心配は杞憂で、乙原さんは少し思案した後にすぐこう言った。

「確かに、仰る通りですね。少しイメージに振りすぎました。もっと〝体験〟にフォーカスした案を練ってくるので、来週もう一度お時間いただけますか?」

「勿論です」

「森場さんの中で具体的なビジョンがもしあれば、それもお聞きしておきたいです」

「実はですね……」

 おお……。

 いつの間にか森場くんと乙原さんの二人の世界が出来上がっていた。その場で〝ああでもない、こうでもない〟と議論が始まり、企画が形を成していく。プロ同士が組むとこうなるのか……。

 こうなると他の面々も入っていけないらしく、森場くんと乙原さん以外のメンバーは会議机のもう半分に集まって別の議論を始めた。私は隣の湯川さんにこそっと尋ねる。

「あっちはお任せでいいんですか?」

「うん。森場が入ってれば変なことにはならないからね。我々はある程度まとまった段階でブラッシュアップの意見を出せば大丈夫よ」

「そういうものですか……」

〝さすが信頼されてるなぁ〟と感心していたら、隣からガシッと肩を掴まれた。

「あうっ」

 肩を掴んできたのは森場くんだった。

「吉澤さんは最初からこっち」

「あらあら」