乙原さんのプレゼンは過剰すぎなくて聞きやすかった。営業さんが〝すごいプランナー!〟と推してくるので、そのイメージだけでやり切ろうとしてないかな? と少し警戒してしまったけど、乙原さん本人は堅実で手堅い印象。それでいながら、複数ある案のうち最後には突き抜けたアイデアも用意されていて、〝なるほどプロの仕事だなぁ〟と感心してしまったくらいだ。

 森場くんの評価はどうなんだろう……。気になってチラッと隣の彼を盗み見ると、彼は口元に手を添えて難しい顔をしていた。……悩んでる?

「弊社からの提案は以上です。ご不明な点や気にある点がありましたら、何なりと」

 営業さんがそう締めるなり、森場くんが手を挙げた。

「どうぞ」

 彼は他の人に〝先に質問をしていいか〟と目配せで確認した後、乙原さんに向き直ってゆっくりと話し始めた。

「ご提案ありがとうございました。たくさん考えてきていただいて有難いです」

「恐縮です」

「それで――乙原さんの本命は最後の案ですよね?」

 配布された資料を捲りながら森場くんが確認する。乙原さんは頷き「そうです」と肯定して、スクリーンのスライドを最後の案のページまで捲った。向こうの営業さんの意図はいろいろあったみたいだけど、二人は最初から最後の案についてしか話す気がなかったみたいだ。