商品企画部には配属が決まってからすぐに挨拶に行ったので、もうだいたいの人の顔は把握していた。商品企画部はまた営業部とも雰囲気が違い、どことなく華やかで和気あいあいとした雰囲気。気さくな人が多く〝ここなら楽しくやっていけそう……!〟と思ったの束の間、私はすぐに上のフロアに移らなければいけなかった。

 大河内部長からは、しばらく〝LUXA〟プロジェクト専任で働くことを言い渡されている。だから、商品企画部での挨拶もほどほどに荷物を抱えてプロジェクトルームに移動した。社内でも特に機密性の高い情報を扱うからか、新製品プロジェクトが立ち上がるときはプロジェクトごとに部屋が与えられることになっている。私のメインデスクはしばらくそっちの部屋に置かれるので、当面の私の居場所もそっちになる。

 プロジェクトルームに行くのはこれが初めてだった。関係者として登録された人の社員証でしか入れないその部屋には、大河内部長のような管理職でも入ることができない。「事前の挨拶は特にいらないだろう」と言われ、そのまま迎えた異動当日。〝LUXA〟のプレートが貼られたドアの前で、私は深呼吸する。

「……よし!」

 ドアの横、胸の高さにあるボックス型のカードリーダーに社員証をかざすと、〝ピロンッ♪〟と音がして緑色のランプが灯り、続いて〝ガチャッ〟と鍵の開く音がした。……本当に私の社員証で入れるようになってる!

 魔法の鍵を手にいれたような感動を覚えつつ、レバーを下げてドアを押し開ける。

「失礼しまーす……」