僕が桃田さんより年上でずっと大人だったら、こんなとき抱きしめて気の利いた言葉の一つや二つ言えるのに。

まだ高校生の僕がそんな大それたことをしても、ただ格好悪いだけ。

でも、今だけ。

この瞬間だけでも僕を大人にしてくれないだろうか

桃田さんの投げ出された左手を、臆病な僕は上から重ねることしかできなかった。

その僕の右手はダサくも震えていたんだ。

あぁ、なんて格好悪い。

こんなことしか思い浮かばない僕は、等身大の恋愛しか経験してなかったことを悔やむ。

僕は貴女のために大人になりたい。

強くて逞しくて、包容力も経済力ある大人になりたい。

そして僕は愚かにも貴女に愛されたいと願うばかり。

不釣り合いなのに。

僕なんかじゃ、届かない人。

でも、その瞳にいつか僕を映して欲しい。

ひと欠片の希望を、僕は捨てることが出来ないんだ。