「さっきおばさんがいってたこと、あってる。本当は嫌いとかいっておきながら、今でも母さんのこと嫌いになんてなれてない」

静寂をきるように、でも静かにそう口にした。

「後悔、してる。俺、一度も母さんと向き合おうとしなかった。母さんを呼び止めても、母さんを追いかけることはなかった。母さんの手をつかんでいかないでっていえなかった。

なんで、なんで死んじゃったんだよ」

涙を流しながら龍希くんは悔しそうに何度も手をベッドに打ち付ける。

「苦しい、すごく。なにも伝えられなかった。女手一つで育ててくれたのに、ありがとうの一言もいえなかった」

わたしはなにもいえなかった。

ただ龍希くんの手をとって握ることしかできない。

龍希くんも手を強く握り返してくる。


「愛、ありがとう」


そのまましばらく龍希くんはもう片方の手で顔を隠しながら泣いていた。