「さっきは悪い、いいすぎた」
「こちらこそ、大好きな海だったのに、ごめんなさい」
「俺もさ、死にたいって思ったことあるんだ」
「え?」
「中学のときいじめられててさ。それでなにもかもいいやって。このまま死んだ方が楽なんじゃないかって」
「そう、なんですね」
「でも死ねなかった。結局死ぬのが怖かったんだよ、俺」
「・・・」
「お前がさ、海の中入ってくのみえたとき、あのときの俺に似てるって思った。本当は助けようか迷った。あの子は死にたいって、死ぬ覚悟を決めて、それなら止めるのもどうなんだろうって。
でも、結局足が動いてた。死んでほしくないって思ったから。俺もあのときは死にたいって思ってたけど、いまは違う。生きててよかったって本当に思ってる。
それをあの子にもわかってほしいなって。生きててよかったっていつか思える日があったらいいなって」
こんな風にわたしのことを思って助けてくれる人がいるだけで、わたしはもうすでに生きててよかったなって思う。



